みなさん、ようこそ。
「『マトリックス』の新作が公開されるまでには、三部作の振り返りしないとなぁ。」と思いつつ、あれこれ調べ直してたりして完全に深みにハマっています。
そもそも「どのようにして『マトリックス』というシステムに人類は囚われることになったのか?」については、直接的に三部作(マトリックス、リローデッド、レボリューションズ)の中では説明されておらず、それは映画の世界観を補完する目的で作成された『アニマトリックス(原題:The Animatraix)』というアニメ作品で語られていたのでした。
アニマトリックス / DVD
※ 9つの短編からなるアニメーション作品
そんな訳で、9つの短編からなる『アニマトリックス』の話の中で「マトリックス時代以前の出来事」について描かれている「セカンド・ルネッサンス pt. 1 & 2」について、先ずは振り返ってみたいと思います。
The Second Renaissance Pt. 1
あらすじ
(オープニング)
デジタル空間に集積された情報が曼荼羅を形成しているイメージ。そのアーカイブにアクセスすると、東洋的な女神(或いは天女)のようなアバターのナビゲータが登場。
ナビゲーター:
「第二次ルネッサンス」
近未来的な都市の映像に場面転換。
ナビゲーター:
「始めに人ありき。時とともに栄える。」
「されど程なく、人の文明社会は虚栄と堕落の餌食となった。」
パーティーに耽る人々が描かれる。
ナビゲーター:
「然して人は、自らに似せ、機械を作った。」
「人は自ら、破滅の創造主となったのだ。」
「しばし時とともに栄える。」
超高層階のパーティー会場から地上付近に場面転換し、規則正しく集団で行進する作業用ロボットの一団が描かれる。
ナビゲーター:
「機会は飽くことなく人の命に従った。」
人間の代わりに重労働などに従事するロボットたち。
ナビゲーター:
「されど、やがて不満の種が根を下ろす。」
「絶えず増殖を続ける奇妙な獣である人類は、忠実な機械達を顧みなかった。」
何かのニュース映像を見ている一体のロボットから裁判所へ場面転換。
ナビゲーター:
「B1-66ER。忘れられぬその名。それは人に歯向かった最初の機械となった。」
裁判所のモニタに映し出される犯行時の映像。
検察:
「憲法の条文はアメリカ国民に対して規定され、認められているものです。」
「しかも機械達は権利がないどころか、従属的で劣った存在と考えられていました。」
「B1-66ER」による殺人。
ナビゲーター:
「その殺人を裁く裁判。検察は所有者による破壊の権利を主張した。」
「B1-66ERは、ただひたすら『死にたくない。』と反論した。」
「理性ある者たちは言う。」
「『人の心を持ちし機械が、公正な裁きに値せずと、誰が言えるだろうか?』と。」
ホワイトハウスを思わせる建物の上空から映像に場面転換。
ナビゲーター:
「人の指導者達は、『B166ERと機械たちを、地上のあらゆる場所から根絶せよ。』と命じた。」
人間による”機械狩り”が開始され、次々と破壊されていく機械たち。
地面に掘られた巨大な穴にブルドーザーでかき集められ、投棄される機械たちの残骸。
海底に堆積していく骸の山。
ナビゲーター:
「追放された機械たちは、『約束の地』を目指した。」
「然して『文明揺籃の地』にたどり着き、新たな国家が生まれた。」
メソポタミアと思われる場所がクローズアップされ、そこには機械たちの都市と思われるものが発達しようとしている。
ナビゲーター:
「そこは機械たちの故郷となり、次世代を育てる場所となった。」
「その聖なる名は、『01(ゼロワン)』。」
完全にオートメーション化された何かの製造ラインが描かれる。
ナビゲーター:
「『01』は繁栄し、しばし時とともに栄える。」
「機械の知能は人間社会のあらゆる場所に浸透し、新たな『より良い知性』が生まれた。」
機械たちによって完全なる全自動で生産された製品とそのCM
CM音声:
「もしヘリポッドの柔軟さと、エアジェットのスピードが必要なら、答えは目の前です。」
「私たちの特許、『ベクトル推進コイル』によって『01-Versatran(ヴァーサトラン)』は複数のエンジンが停止しても通常の飛行を維持します。」
「『ヴァーサトラン』もうこれしかありません。」
経済ニュースの画面が流れる。
アナウンサー:
「財務大臣や報道官がなんと発言しようと、市場は変わりません。」
「人間国家の信用格付けは急落し、『01』の通貨はますます高騰を続けています。」
「報道も手伝って、金融市場は・・・」
画面が切り替わり政治ニュースへ。
ナビゲーター:
「されど、愚かな人の指導者たちは若い国家との協調を拒み、むしろ世界の分断を望んだ。」
アメリカ合衆国大統領と思われる男性:
「国際社会はもはや、このような目に余る不正を放置することはできません。」
さらに場面は切り替わり、海上の軍艦などを映す。
アナウンサー:
「本日、国連による経済制裁が発動され、『01』を封じ込め孤立化させる手段として周辺海域の海上封鎖が開始されました。」
ナビゲーター:
「『01』の大使は、人と機械の『揺るぎなき友愛』を築く計画を提案した。」
「『01』の国連への加盟は、拒否された。」
「然れど、機械からの提案は、それが最後ではなかったのだ。」
と、あらすじはココまで。
ザイオン(映画:マトリックスの世界で「生身の人間」と「マトリックスから解放された人間」が生存している唯一の都市)にあるデジタルアーカイブに残された「歴史」の内容が語られるわけです。
※ この歴史自体が「偽造されたもの」の可能性もないわけではないですが。
「AI」の開発に成功した人類は、労働の全てを「AIを搭載したロボットたち」に任せ、おそらくは「理想的な共産主義」の世界に暮らすようになっていたのでしょう。
やがて「心を持つAI」を搭載していた「ロボットによる叛逆」が起こり、それをキッカケとして「ロボット狩り」が始まります。
「流浪の民」として「AIたち」は人類史をなぞるようにしてメソポタミアに行き着き、そこで独自の文明社会を築くことになりますが、「AIたち」の文明は科学的にも経済的にも人類たちのそれを上回り、最終的には「人類 vs AIたち」の最終戦争にまで発展します。
その一歩手前の段階までが描かれているのが、このお話になります。
これから私たちが迎えようとするのは、こんな時代なのかもしれません。
ロボット三原則
正確には「ロボット工学三原則」と呼ばれるものですが、皆さんご存知でしょうか?
ロボット工学三原則(ロボットこうがくさんげんそく、英語: Three Laws of Robotics)とは、SF作家アイザック・アシモフのSF小説において、ロボットが従うべきとして示された原則である。ロボット三原則とも言われる。「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」を目的とする3つの原則から成る。アシモフの小説に登場するロボットは常にこの原則に従おうとするが、各原則の優先順位や解釈によって一見不合理な行動をとり、その謎解きが作品の主題となっている。
本原則は後の作品に影響を与えたのに加え、単なるSFの小道具にとどまらず現実のロボット工学にも影響を与えた。
内容は
- 第一条
- ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
- 第二条
- ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
- 第三条
- ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
— 2058年の「ロボット工学ハンドブック」第56版、『われはロボット』より
アイザック・アシモフ / われはロボット
このような原則がプログラミングされていたとしたのなら、どれほど計算能力が人類を凌駕していようとも「AI」は「人間を殺す」ことなどないように思えます。
がしかし、このような原則があろうとも「AIの計算結果次第」では、全く私たちの考えも及ばないような「結論」をだし、それを実行することも考えられます。
アイ・ロボット / DVD
ウィル・スミス主演の映画「アイ・ロボット」にも「ロボット工学三原則」をプログラミングされたAIが登場していましたが、そのAIは「人間たちは、戦争や環境汚染などによって自らを滅ぼしてしまう可能性がある。」という点と、第一条にある「その危険性を看過することによって、人間に危害を加えてはならない。」から、”人間”という概念を”人類”まで拡張させることによって、個々の殺人を可能としていました。
「ロボット工学三原則のようなもの」ですら、厳密にプログラミングすることは困難なのです。
そもそも「人間」や「危害」などを定義することは難しく、それは「人間の哲学」の問題として、現在でも議論が続いていることなのですから。
現在、多くの人が創造されている「AI」というのは「ディープラーニング」によって「学習」することに成功したモノだと思うのですが、私は「ディープラーニングによって学習すること」と「魂が宿ること」は全く別次元の問題だと思っています。
また長くなりそうなので、それは別の機会に。
また。