ようこそ、みなさん。
「ロックフェラーの計画書(とされるもの)自体」を読み解いて行く前に、まずはお話ししておきたいことがあります。
また「姑獲鳥の夏」から丸ごと引用することから始めましょうか。
「過去は作れる(作られる)」というお話です。
※ 「カワイイは作れるっ!」的な。
長すぎる妊娠
(京極堂)
「ところでこの干菓子の生前、つまりゴオタマ・シッダールタも随分と異常な出産でご誕生なさったらしいじゃないか」
彼が何の話を始めたのかを理解するまで、私には一瞬の間が必要であった。
「お釈迦様じゃあ例えが悪いなーーーちょっと違う。そうだな、まず平将門(たいらのまさかど)なんてのはどうだい?『法華経直談鈔(ほっけきょうじきだんしょう)』に拠ると、母の体内にいること三十と三箇月となっているぜ」
(中略)
(京極堂)
「後、有名どころとして挙げられるのは、武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)かな。『義経記(ぎけいき)』の所伝によれば十八箇月だし、御伽草子の『弁慶物語(べんけいものがたり)』だと驚いたことに三年三箇月、実に三十九箇月目に産まれて来たと記してある。髪の毛も歯も生え揃った<鬼子(おにご)>であったそうだ。『慶長見聞集(けいちょうけんぶんしゅう)』に載っている大鳥一兵衛(おおとりいちべえ)という暴れ者も、投獄された際に十八箇月間体内にいたと嘯(うそぶ)いている。もっともこれは自己申告だからどうも怪しいがね」
(関口)
「何だか釈迦の他は悪人ばかりだな」
(京極堂)
「弁慶法師は悪人じゃないだろう。ただ荒事が好きなだけだ。ただ悪人というのはいい目の受けどころだ。将門新皇だってついこの間まで天下の大悪人だったしねーーー」
「姑獲鳥の夏」P.75 より
悪人だろうーーーと、能(よ)く解らぬままに私はいった。
(京極堂)
「そうだ、悪人といえば伊吹山(いぶきやま)の酒呑童子(しゅてんどうじ)も凄いよ」
(関口)
(京極堂)
「そっちが有名になっただけだよ。まあどっちでもいいや、その鬼の大将だよ。御伽草子の『伊吹童子(いぶきどうじ)』では三十三箇月目、『前太平記(ぜんたいへいき)』では十六箇月目に産まれたとある」
(関口)
「しかし京極堂、十六、十八、三十三、三年三箇月と並べるとどうも信憑性がない。後から取ってつけたような数字だな」
(京極堂)
「勿論、後からさ。彼らは残虐非道の鬼になったり、極悪人や豪傑の判を押された
その時に、遡って過去ができたのだ」
(関口)
「量子力学みたいじゃないか」
(京極堂)
「そうさ。鬼は常に<異常な出産>によって産まれなければいけない、そういった強い民俗社会の共通認識が過去にはあった訳だ。特に我が日本ではかなり徹底していた。これは裏返せば<異常な出産>によって生を受けたものは鬼になるという共通認識があったということでもある。だから実際の鬼や極悪人は<異常な出産>の出自を持たなければ説得力に欠ける。因果関係の逆転だ。鬼だと推測された時点で遡って、異常出産という過去が形成される訳だ。だからと言って真実異常な出産で生まれた子供が鬼や悪人になる証拠にはひとつもならないがね」
「姑獲鳥の夏」P.76 より
(関口)
「本当に<異常な出産>だったにもかかわらず普通の人生を送った例はないのかい?」
(京極堂)
「ない。なぜなら<異常な出産>で生まれた鬼子(おにご)の将来は決まっているのだから、これは確実に殺された」
(関口)
「だって酒呑童子なんかは生き延びただろう?そんなに確実に殺したいのなら鬼や悪人は産まれないことになる」
(京極堂)
「だから酒呑童子なんかは鬼の烙印を押されたそのときに遡って過去が決まったっていったじゃないか。そのときは殺されずに捨てられたとかいう理由ができるのさ。もし隠れて生き延びた者で、普通の人生を送った者がいたとしたら、今度は遡って<異常な出産>の過去は消えてしまうんだ」
姑獲鳥の夏」P.77 より
(京極堂)
「どうやら納得がいったようだね、先生。民俗社会の持つ共同幻想を僕らは今や理解できないが、理解できないものを勝手に曲解して、訳知り顔をしたりしてはいけないのだ。鬼子は現代ではまったく別の意味で理解されてしまう。それが僕には合点(がてん)がゆかない。記事を書くのは君の勝手だが、記事は一人歩きするからね。何の罪もない赤ん坊の将来を鬼か蛇かに限定するような無責任なものは控えたいじゃないか」
姑獲鳥の夏」P.78 より
遡って過去が決まる
いかがでしたでしょうか?
歴史とは常に「勝者が書き残す」ものです。
勝者側に都合のいい部分だけが、拡大されて伝えられます。
ヒトラーだって、ドイツが勝利していれば「まったく違う人物」として、私たちは教えられてたことでしょう。
ビル・ゲイツだって、一昔前までは「ただの世界一の大金持ちの、道端に落ちているドル紙幣を拾うより、普通に歩いているだけで儲かる、実は庶民的にマックにも並んじゃう、ジョブスに比べてセンスのない、メガネのガリ勉タイプの人」でした。
今のように「人口削減を目論む、天下の大悪人」ではなかったのです。
遡って作られた過去を補強するように、色眼鏡で現在進行形のことを見て、さらにそれを補強するような理論を重ねる。
今や「陰謀論」や「都市伝説」は私たちの民俗社会に根付きつつあります。
新しい説明原理が、我々には与えられました。
ただし「それがどんなもんか?」を弁えている人間はごく一部です。
記事は一人歩きします。
おまけに「個人が情報発信できる時代」です。
「自分が情報発信者になること」を推奨する勢力まであります。
分析能力もない個人が情報発信してどうなるんでしょう?
おまけに弁えてもいない。
さらなる「混沌をもたらすための兵器」だったら?
インターネットとは、もともと「軍事技術」として開発されたものです。
その技術を民間に開放した理由は?
こうなることを見越していたんではないでしょうか?
新たなる「共同幻想」が巷には溢れています。
もっと裏の裏まで邪推すると「混乱の階層が何層にも膨らむので、絶対に真相(深層)にたどり着くことがないように設計されている」のかもしれません。
本人は善意100%で行なっていて、悪人の謗りを受けるようなことは何もなかった。
ただし、その人物が行ったことを何百年か後の子孫たちが判断すると「あれは間違いだったよね」となるような。
こういう視点で、私は物事を考え続けていきたいと思っています。
「真実が何か?」はわからないかもしれません。
ただ「弁える」ことぐらいはできるでしょう。
誰にだって。
J DIlla / Think Twice
youtu.be※ 「天才」とは彼のこと。
Donald Byrd / Think Twice
www.youtube.com※ こっちがオリジナル。
また。
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