ようこそ、みなさん。
先日、軽く「ウイルス進化説」のお話をさせていただきました。
今日はさらに「動的平衡」と「遺伝子の水平伝搬」も絡めて書かせていただこうと思います。
そもそも「人体」って?
まぁ、いろんな経験などもありまして。
私は人体を「閉じられた系(システム)」だと思っていません。
環境に影響され、食べているものに左右され、新陳代謝を繰り返しながら活動しているもの。
以前に「川」に例えたかもしれませんが、そのような「現象」だと思っています。
ゴミや汚水が流れている濁った川もあれば、清らかなる川もある。
わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしよに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)
宮沢賢治 『春と修羅』 より
このような「因果交流電燈のひとつの青い照明」であると思います。
これは子供の頃に賢治を読んでから以来「なんとなく」感じてきたことですが、それが大人になるにつれますます強い思いとなってきました。
動的平衡
みなさんは「動的平衡」という言葉をご存知でしょうか?
動的平衡(どうてきへいこう、英語:dynamic equilibrium)とは、物理学・化学などにおいて、互いに逆向きの過程が同じ速度で進行することにより、系全体としては時間変化せず平衡に達している状態を言う。
系と外界とはやはり平衡状態にあるか、または完全に隔離されている(孤立系)かである。 なお、ミクロに見ると常に変化しているがマクロに見ると変化しない状態である、という言い方もできる。これにより他の分野でも動的平衡という言葉が拡大解釈されて使われるが、意味は正確には異なる。これについては他の意味の項を参照。
簡単に言うと「私たちは日常から常に入れ替わりを繰り返しながらバランスを保とうとしている」ということです。
私がこの言葉を知ったのは「福岡伸一」さんの本を読んでからでした。
福岡 伸一(ふくおか しんいち、1959年9月29日 - )は、日本の生物学者。青山学院大学教授。ロックフェラー大学客員教授。専攻は分子生物学。農学博士(京都大学、1987年)。東京都出身。
福岡さんの本はどれも読みやすく、ほかにも
福岡伸一 / 福岡伸一、西田哲学を読む(生命をめぐる思索の旅)
などの素晴らしい本があります。
「動的平衡」から学べることは
「私たちは常に他者と関係しながら生きている」
という事実です。
ウイルス進化説
前回は軽く触れただけなので、もう少し詳しく。
ウイルス進化説(ウイルスしんかせつ)は、自然淘汰による進化を否定し、進化はウイルスの感染によって起こる[1][2]という主張。中原英臣(新渡戸文化短期大学)と佐川峻(科学評論家)が主張した進化論説である。
概説
彼等によれば、ウイルスによって運ばれた遺伝子がある生物の遺伝子の中に入り込み、変化させることによって進化が起きるとする。
ウイルスの遺伝子が宿主に取り込まれる可能性とその進化的意義については、レトロウイルスの逆転写酵素が発見された直後からすでに議論されていたとし、「進化はウイルスによる伝染病」ととらえ、適応進化を否定する。また彼等は、自論を今西進化論を支持するものと主張している。
中原英臣、佐川峻らは、以上の見地から、ウイルスはミトコンドリアや葉緑体と同じオルガネラであると主張している。 ウイルスが遺伝子の移動を行っているオルガネラであるとすれば、遺伝子の移動によって起きる進化は、生物が持っている機能と考えられる。
中原英臣・佐川峻 / ウイルス進化論
竹村政春さんの「生物はウイルスが進化させた」という本によると
ヒトゲノムの最も大きな領域にあたる40%以上にもわたる部分は、かつてウイルスに(ならびにそれと振る舞いがよく似たもの)が感染した名残であると考えられている。
とのことです。
竹村政春さん / 生物はウイルスが進化させた
竹村さんの面白いインタビューを見つけたのでリンクを貼っておきます。
遺伝子の運び屋
ウイルス進化説は三本の柱で支えられている。一つ目は、ウイルスによる個体から個体への遺伝子の水平移動が起きること。二つ目は、ウイルスによる遺伝子の水平移動は種の壁を越えて起きること。そして、三つ目は、ウイルスは遺伝子を運ぶためのオルガネラ(細胞内小器官)だということだが、これが最も重要な柱である。つまり、ウイルスは生物が進化するのに必要な遺伝子を運ぶ道具、遺伝子の運び屋だというのだ。
例えばキリンの首について、ダーウィン進化論では、遺伝子の突然変異によって従来のキリンよりも少しだけ首の長いキリンが生まれたとする。このキリンは従来より高い所の葉を食べることができるようになり、従来のキリンより有利なので、生き残る確率が高くなる。その生き残った少し首の長いキリンから、さらにもう少し長い首のキリンが突然変異で誕生し、そのキリンはさらに有利なので生き残る。こうしたプロセスを繰り返すことで、現在の長い首を持つキリンになったと考える。これに対し、ウイルス進化説では、首が長くなる遺伝子を持ったウイルスに感染したことで一気に首が長くなったと考えるのだ。
生物は「ウイルスに感染する」ことによって進化してきた。
※ まだ「仮説」ですけども。
遺伝子の水平伝搬
普通「遺伝子」のことを考えるとき、思い浮かぶのは「親から子へ受け継がれるもの」なんだと思います。
つまり「垂直」に先祖代々と受け継がれていくもの。
それが「今までの」遺伝子に対する私たちのイメージです。
じゃあ「水平ってどういうことよ?」てなるわけですが。
遺伝子の水平伝播(いでんしのすいへいでんぱ、Horizontal gene transfer(HGT)またはLateral gene transfer(LGT))は母細胞から娘細胞への遺伝ではなく、個体間や他生物間においておこる遺伝子の取り込みのこと。生物の進化に影響を与えていると考えられる。
遺伝子の水平転移(いでんしのすいへいてんい)と呼ばれることもある。
概要
通常、生物は細胞分裂によって母細胞から娘細胞へ染色体がコピーされる。しかし、腸管出血性大腸菌の毒素産生性DNAが赤痢菌のDNAから取り込まれたと推測されるように、主に原核細胞において、他の細胞から何らかの原因(バクテリオファージの感染や種の異なる細菌の接合による他の細胞のDNAの取り込みなど)によって遺伝情報の一部が組み込まれることがある。これは遺伝による継承を時間的な垂直方向(遺伝子の垂直伝播)とするならば、同時的に存在する他の生物からの影響による水平方向の遺伝であると考えることができ、「水平」伝播と名付けられた。
このような遺伝子では系統樹を作成すると、種の系統樹との間に整合性に矛盾が見られる。
高等生物における遺伝子の水平伝播
高等生物においてもレトロウイルスの影響やDNAウイルス、RNAウイルスの取り込みなどでこの現象が起きており[1]、ヒトのゲノムにもウイルスの遺伝子が取り込まれていることが知られている[2]うえ、4000万年前にRNAウイルスの遺伝子が取り込まれたとの大阪大学朝長准教授らの論文が、2011年1月7日の学術雑誌『Nature』[3][4]に掲載されている。進化にウイルスが関与する可能性も検討されている[5]。ただし水平伝播によって取り込まれ、その高等生物の機能に影響を及ぼしたことが確実な遺伝子はまだ見つかっていない(推測される事例は、下記のようにいくつか見つかっている)。また、多細胞生物の場合における核遺伝子の水平伝播による書き換えは、生殖細胞に反映されない場合は子孫に伝わらない。
ある種のトランスポゾンは複数の生物で転移することができ、ミトコンドリアや葉緑体といった細胞小器官の遺伝子は、核ゲノムへの移行が起こっていることが知られている。植物ではラフレシアなど寄生植物の関係した水平伝播と思われる例がいくつか見つかっている。動物では、ホヤのセルロース生成能、一部のシロアリに見られるセルラーゼ生成能が水平伝播を示唆している。
そうなのです。
「個体間(人間同士)や他生物間(人間と他の生物など)でも遺伝子の交換が行われている」のです。
これについて面白い海外記事があるので翻訳してみたいと思います。
145の「エイリアン」遺伝子の謎。科学者たちは、いくつかのDNAが私たちの祖先のものではないことを発見し、進化についての考え方を変える可能性があると言います。
・ 進化は受け継がれた遺伝子だけに依存しているという見解に挑戦する研究
・代わりに、微生物から本質的な「外来」遺伝子を獲得したと言う
人間には先祖から引き継がれていない「異質な」遺伝子が含まれていることが、研究者たちによって発見されました。
古代に環境を共存させていた微生物から本質的な「外来」遺伝子を獲得したという。
この研究は、動物の進化は先祖代々受け継がれてきた遺伝子だけに頼っているという従来の見解に挑戦し、そのプロセスはまだ続いている可能性があると述べている。
オープンアクセスジャーナル『Genome Biology』に発表された研究は、同じ環境に住む生物間での遺伝子の移動である水平遺伝子移動の利用に焦点を当てています。
ケンブリッジ大学のAlastair Crisp氏は、「これは、水平遺伝子導入(HGT)が、ヒトを含む動物でどれだけ広く行われているかを示した初めての研究であり、数十から数百の活性な "外来遺伝子 "を生み出している」と述べている。
驚くべきことに、はるかにまれな発生であることから、それはHGTが多くの、おそらくすべての、動物の進化に貢献していることが表示され、プロセスが進行中であること、我々は進化について考える方法を再評価する必要があるかもしれないことを意味しています。
HGT は単細胞生物ではよく知られており、抗生物質に対する耐性など、細菌がいかに早く進化するかを説明する重要なプロセスであると考えられています。
HGT は、微生物や植物から遺伝子を獲得した線虫や、コーヒーの実を消化するための酵素を作るためにバクテリアの遺伝子を獲得したカブトムシなど、一部の動物の進化に重要な役割を果たしていると考えられています。
しかし、HGTが単独で祖先から直接遺伝子を獲得するのではなく、ヒトのようなより複雑な動物で発生するという考えは、広く議論され、争われてきた。
遺伝子の水平伝搬
同じ環境に住む生物間での遺伝子の移動は、水平遺伝子移動(HGT)として知られています。
単細胞生物ではよく知られており、細菌がいかに早く進化するか、例えば抗生物質に対する耐性などを説明する重要なプロセスであると考えられています。
HGTは、微生物や植物から遺伝子を獲得した線虫や、コーヒーの実を消化するための酵素を作るために細菌の遺伝子を獲得したカブトムシなど、一部の動物の進化に重要な役割を果たしていると考えられています。
これらの「科学的な知見」をベースに考えた時に、はたして「ウイルスは人類の敵なのか?(敵でしかないのか?)」という疑問にぶち当たります。
農学博士の中屋敷均さんによると
人体にとってウイルスは善か、悪か?
とは言うものの、現実問題としてさまざまなウイルスに人間は感染し、病気にかかってしまう。例えば、大腸にはもともとさまざまな大腸菌が存在している。そこに、ウイルスの介在によってコレラ菌から毒素遺伝子が大腸菌に運び込まれることで、人を病気にする腸管出血性大腸菌「O-157」が出現したとのことだ。ここでは完全に“悪役”だ。
「ウイルスは一般的には病気の元になりますし、それは事実。一方でウイルスがあるからこそ元気でいられることもあるんです。例えば、子宮で子供を育てるという戦略は、哺乳類が繁栄できているキモだと言われています。実は、子宮の胎盤形成に必須の遺伝子の一つがウイルス由来のもので、胎盤の機能を進化させる上で重要な役割を果たしていることが知られています。現在でも、その遺伝子がなければ胎盤は正常には作れません」また、ウイルスには他の病原体の感染をブロックしてくれるような存在意義もあるそう。
「例えばヘルペスのように、それがいることで他の菌に感染しにくくなっている、と報告されているものがあります。あるウイルスのおかげでわれわれの体は他の菌やウイルスに対して強くなる。つまり、ワクチンを打っているようなものかもしれませんね」
ウイルスは遺伝子として機能するため、ゲノムの中に存在するウイルスは、多様で重要な役割を果たしていることが、次々と分かってきているという。中屋敷教授が、「そもそもわれわれの進化も、そういったウイルスや“ウイルスのようなもの”のおかげで加速されてきた側面があると思います」というように、DNAにウイルスが入ってくることで変革が起こり、それが長いスパンで見ると“進化”の引き金になったとこともあるそうだ。
emira-t.jp より
とのことです。
いかかがでしたでしょうか?
「人工的に作られた存在」なのかもしれませんし、そうじゃないのかもしれません。
「後遺症はどうなのか?」「致死率はどれぐらい高いものなのか?」などなど、未だにハッキリとしたことがわからないことだらけです。
政府の対応も場当たり的に見えますし、かといって恐怖し過ぎると経済が死にます。
とにかく不安なことだらけに感じる方もおられるでしょう。
私はかなり早い時点で「こりゃなんかマズイことに全世界的になるかもなぁ」と思っていましたし、こういう知識にも日頃から敏感だったので腹を括ることができていました。
みなさんの「過剰な不安」は取り除きつつ、それでも「正しく恐れて備える」ことに繋がるような記事を書いていけたらと思っています。
何事もバランスです。
Arvo Part / Spingel im Spiegel
www.youtube.com※ これ貼ったっけ?安らかな気持ちで。
また。
↓良ければポチっと応援お願いします↓