ようこそ、みなさん。
本日は「アナロジー」のお話を。
「アナロジー」とは?
みなさんは「アナロジー」という言葉を聞かれたことがありますか?
「アナロジー思考」や「アナロジー思考法」などといった使われ方をしています。
いつもように「言葉の意味」から見ていきましょう。
百科事典マイペディアの解説
ギリシア語アナロギアanalogia(〈比〉)に由来する語で,〈類推〉〈類比〉〈比論〉などと訳される。複数の事物間に共通ないし並行する性質や関係があること,またそのような想定下に行う推論(類推)。詩的比喩として用いられることもあり(〈人生の春〉),スコラ学にあっては存在のアナロジー的性格すなわち〈存在の類比analogia entis〉が強調される。 出典 株式会社平凡社百科事典マイペディア
世界大百科事典 第2版の解説
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版
精選版 日本国語大辞典の解説
〘名〙 (analogy) ① ある事柄をもとに他の事柄をおしはかって考えること。特に、論理学で、物事の間の特定の点での類似性から、他の点での類似性を推論すること。類推。類比。② 生物学で、異種の個体内で器官の形態、機能が類似すること。鳥の羽と蝶のはねはその例。類似。③ 言語学で、類推による表現。
「論理学」「生物学」「言語学」の三つの分野で使われる言葉ですが、今回は「論理学」的な意味での「アナロジー」についてお話ししたいと思います。
とにもかくにも、日本語では「類推」であるようです。
念のために「類推」をWikipediaでも見てみます。
類推(るいすい)は類比(るいひ)、アナロジー(Analogy)ともいい、特定の事物に基づく情報を、他の特定の事物へ、それらの間の何らかの類似に基づいて適用する認知過程である。古代ギリシャ語で「比例」を意味する ἀναλογία アナロギアーといった概念に由来し、広義においてこれはロゴスに含有する。
類推は、問題解決、意思決定、記憶、説明(メタファーなどの修辞技法)、科学理論の形成、芸術家の創意創造作業などにおいて重要な過程であるが、論理的誤謬の排除が難しい場合も多く、脆弱な論証方法である。科学的な新概念の形成過程は、チャールズ・パースによるアブダクション理論として区別されることもある。
異なる事象に対し類推することで、共通性を見出す言語的作業が比喩である。 言語学では、言語自体に対する類推が言語の変化の大きな要因とされる。
「論理的誤謬の排除が難しい場合が多い」のです。
議論などで使うと厳密性に欠けるし、まして相手に「どことどこが似ているか?」の説明までしないといけなくなるので、理解してもらうまでに非常に説明が長くなります。
ただし「個人の発想法」としては非常に有能だと思います。
「比喩法」の種類
デジタル大辞泉の解説
物事を直接に描写・叙述・形容などしないで、たとえを用いて理解を容易にし、表現に味わいを加える修辞法。直喩(シミリ)・隠喩(メタファー)・諷喩(ふうゆ)(アレゴリー)・引喩(アリュージョン)・換喩(メトニミー)・提喩(シネクドキ)などの種類に分けられる。
隠喩(読み)いんゆ(英語表記)metaphor
比喩法の一。「…のようだ」「…のごとし」などの形を用いず、そのものの特徴を直接他のもので表現する方法。「花のかんばせ」「金は力なり」の類。暗喩。隠喩法。メタファー。
諷喩(読み)ふうゆ(英語表記)allegory
1 他の事にかこつけて、それとなく遠回しにさとすこと。
「吾輩の既に再三―したるが如く」〈尺振八訳・斯氏教育論〉
2 比喩法の一。たとえだけを提示して、その本義を間接的に推察させる方法。「燕雀(えんじゃく)安(いずくん)ぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや」が、小人物に大人物の心はわからないの意をさとらせる類。諷喩法。
引喩(読み)いんゆ(英語表記)allusion
比喩法の一。故事・ことわざや人の言葉をたとえに引用して、言いたいことを間接的に表現する方法。「四十にして惑(まど)わず、と論語でいう通り…」の類。引喩法。アリュージョン。
換喩(読み)かんゆ(英語表記)metonymy
比喩法の一。ある事物を表すのに、それと深い関係のある事物で置き換える法。「青い目」で「西洋人」を、「鳥居」で「神社」を表す類。メトニミー。
提喩(読み)ていゆ(英語表記)synecdoche
比喩法の一。全体と部分との関係に基づき、「花」(全体)で「桜」(部分)を、「小町」(部分)で「美人」(全体)を表現する類。シネクドキ。
「隠喩」と「引喩」の読みが同じ「いんゆ」でややこしいですね。
「諷喩(ふうゆ)」「換喩(かんゆ)」「提喩(ていゆ)」などは、これらの言葉を知らずとも日常的に使っている技法ではないでしょうか?
私が思うに「日本語」というのは、日常的に高度な「見立て」などを行ってきた言葉でした。
徐々に「日本語の良さ」を壊そうとしている人がいるような気もしています。
藤原成一 / かさねの作法
※ 以前もご紹介しましたが、この本を読むと「日本語の奥深さと日本文化の関係」についての理解が深まります。
一を聞いて十を知る
私が「アナロジー思考とは?」とは聞かれれば、ズバリ「一を聞いて十を知ることができる能力です!」と答えるでしょう。
少ない情報からでも全体の情報を得ることができることです。
決して超能力なんかではありませんし、誰でも高めることができる能力です。
少し説明しただけで、後の説明を聞かなくても全てわかってしまう。
作業の手順を事細かに説明しなくても、すぐに理解できる。
などなど。
「話の理解スピードが早くなる」 ことや「初めての取り組みでも大きな失敗はしない」など、様々なメリットがあるでしょう。
さらには「無駄な時間を使わないで済むようになる」であったり「余った時間を他のことに使える」だったり。
過去にお話しさせていただいた「抽象度」とも関係します。
kazzhirock.hatenablog.jpkazzhirock.hatenablog.jpkazzhirock.hatenablog.jp
要するに「アナロジー思考」とは「抽象度を高めれば高めるほど、さらに有用になる」と言えるかもしれません。
「スターウォーズ」と「神話の力」
ところでみなさんは「スターウォーズ」という映画はご存知でしょうか?
※ 「知ってるっつ〜の」
もちろん、私は大好きです。
ロマンが詰まっています。
ジェダイになりたい!
May The Force Be With You!
さて、そんな「スターウォーズ」ですが。
「ジェダイは時代って言葉から取られたんだよ!」とか「ヨーダは依田さん!」とか「R2とC3POは黒澤映画から!」とか「三船敏郎にオビ・ワン役のオファーがあった!」とか「オビ・ワンは帯ワン!」とか「ジェダイの衣装は和服モチーフ!」とか...
「日本文化へのオマージュ」が様々に散りばめられた作品であることは有名です。
※ 語り明かしたい。
そんな作品なわけですが「ジョーゼフ・キャンベルという人物に大きな影響を受けている作品である」ということを、みなさんはご存知でしょうか?
ジョーゼフ・キャンベル(Joseph Campbell、1904年3月26日 - 1987年10月30日)は、アメリカ合衆国の神話学者。ジョゼフ・キャンベルと表記されることもある[1]。比較神話学や比較宗教学で知られる。
彼の作品は広大で、人間の経験に基づく多面的なものである。彼の人生観は、しばしば「至上の幸福に従え」(Follow your bliss)という一文に要約される。
ジョージ・ルーカスがキャンベルの神話論を『スター・ウォーズ』に採り入れたというエピソードもよく知られている[2]。
よく知られている話のようです。
※ 以下「ジョーゼフ・キャンベル」で統一。
ジョーゼフ・キャンベル / 千の顔を持つ英雄
ジョーゼフ・キャンベル / 神話の力
※ 現代人必読の本だと思います。
松岡正剛さんの書評も是非お読みください。
キャンベルはまた、神の造形はあらゆる民族に共通する「欲求」にもとづいているという原理を提示し、どんな神の造形も解読可能であることを示した。さらには「神話の力」を現代に通じる言葉であらわした。すなわち、神話には集約すれば4つの力があって、それは、①存在の神秘を畏怖に高める力(これはルドルフ・オットーが「ヌミノーゼ」とよんだものに等しい)、②宇宙像によって知のしくみをまとめる力、③社会の秩序を支持し、共同体の個人を連動させる力、④人間の精神的豊かさに背景を与える力、というものである。
キャンベルがこのようなことを見抜けたのも「アナロジー思考」の力があったからだと思われます。
※ このあたりも、そのうち別に詳しく。
「アナロジー思考」
前置きが長くなりましたが、ここからは「アナロジー思考」について。
先ほどは「抽象度を高めることがアナロジー思考には有用」と書きましたが、厳密には「抽象度」と「アナロジー」は違います。
「抽象度」とは、簡単におさらいしておくと
「犬」→「ペット」→「哺乳類」→「生き物」
などのように「概念を抽象化していき、それを度数で考える」ということです。
「アナロジー」は「意味」の方に注目する考え方だと思うと理解しやすいでしょうか?
「ある物事の意味を抽象化する」考え方です。
そして「抽象化された意味を共通化(一般化)して応用する」考え方です。
「具体化」と「抽象化」の違い
「具体化」とは?
「具体化=抽象度を下げる」と言えるでしょう。
例えば「『生物』の抽象度を下げる場合」
「生物」→「爬虫類」→「一般にはペットにできない」→「ワニ」や
「生物」→「鳥類」→「ペット」→「インコ」だったり。
「鳥」と聞いてイメージする動物は人それぞれでしょう。
それを「インコ」や「オウム」や「カラス」など、具体的にしていくことで全員のイメージの統一が可能となります。
「私、鳥飼ってるんだ!」というよりも「私、白いカラス飼ってるんだ!」と言われた方がイメージしやすいのはお当然ですね。
※ 「情報量を増やす」ということ。
「抽象化」とは?
「抽象化=抽象度を上げる」と言えるでしょう。
例えば「『フェラーリ』の抽象度を上げる場合」
「フェラーリ」→「イタリア車」→「車」→「乗り物」や
「フェラーリ」→「スポーツカー」→「車」→「4輪」だったり。
「フェラーリ」と聞いてイメージするのは「フェラーリというメーカーの車」のどれかでしょう。
個別で具体的なモノを「概念として一般化していく」ことを抽象化と言います。
「私、フェラーリに乗ってるんだ!」と言われるよりも「私、スポーツカーに乗ってんだ!」と言われた方が「様々なイメージが浮かぶ」のはお当然ですね。
※ 「情報量を減らす」ということ。
じゃあ、それらを「意味に注目して応用する」って?
「意味」を抽象化し「一般化(共通化)」する
私の体験を例にしてみます。
先生にアドバイスをもらいながら「大人受けする文章」を書いたので作文コンクールで県で一番になった。
この経験を「意味で分解」すると
「文を書く」→「他人(大人)からの評価を気にして書く」→「評価される」
となるでしょう。
これを「一般化(共通化)」して応用すると?
「ブログを書く(文を書く)」→「一般受けするネタで書く(他人からの評価を気にして書く)」→「読者が増える(評価される)」
※ 実際には「一般受け」は気にしないで好きなように書いてるだけなんですけどね。
であったり
「芸能ニュース記事を書く(文を書く)」→「大衆が望むゴシップを書く(他人からの評価を気にして書く)」→「週刊誌の売り上げが伸びる(評価される)」
となるでしょう。
要するに「意味を抽象化して法則を見つけだし、それを他にも当てはめられないか考える(一般化・共通化する)」ということです。
法則を当てはめる「他のもの」が、法則を導き出したジャンルから遠ければ遠いほど謳歌を発揮するような気がします。
例えば
「サーフィンで得た経験」を「仕事に当てはめる」だったり。
「音楽を聴いて得た着想」を「料理に応用してみる」だったり。
このようにして「仮説をたくさん持つ」ことが「一を聞いて十を知る」ことに繋がると思うのです。
9割の部分は「自分が持っていた仮説」を引っ張り出してくるくるか、その場で「法則を見出し他の分野に当てはめてみるだけ」なので。
いかがでしたでしょうか?
論議の話に関連して「アナロジーを乱用すること」について書こうと思っていたのですが、その前に「アナロジーって?」のお話をしとかないとなと思って長くなりました。
相変わらずわかりにくい文章かもしれませんが、これが皆様の理解を深める一助となれば幸いです。
以下「アナロジー」についてオススメの本を。
※ 松岡正剛さんの書評があるものはそれらも添えて。
バーバラ・スタフォード / ヴィジュアル・アナロジー
鈴木宏昭 / 類似と思考
川瀬武彦 / まねる
細谷巧 / アナロジー思考
細谷拓 / 具体と抽象
St.Germain / Rose Rounge
また。
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